法学入門4 「適用」と「準用」の違いと使われ方

1 はじめに

法律の条文を読み解くにあたっては、法律用語の意味や使われ方を知らなくてはなりません。法律用語の意味や使われ方を知らずに条文を読み解こうとすると、そもそも読み解くことができなかったり、間違った読み解きをしてしまうことになりかねません。

しかし、こうした法律用語の意味や使い方について教わる機会はそうそうありません。そこで、弁護士である私が、初学者向けに法律用語の意味と用法を解説していきますので、この機会にみなさんも法律の読み解きができるように法律用語を学びましょう!今回取り扱うのは「適用」と「準用」です。

2 「適用」と「準用」の意味

(1)適用と準用の意味

「適用」は、本体の対象に法律の条文をあてはめることを意味します。これに対して、「準用」は、ある事項に関するルールをそれと類似する他の事項についてあてはめることを意味します。わかりにくいと思いますので、次の例をみてください。

  1. 結婚記念日はデートをする
    1. 互いに1万円以上のプレゼントを用意する
    2. デート中は仕事の連絡を一切しない
    3. デートスポットは事前に2人で協議して決定する
  2. クリスマスはデートをする
    1. 子どもへのプレゼントを用意する
    2. デート中は仕事の連絡を一切しない
    3. デートスポットは事前に2人で協議して決定する

ある夫婦が話し合って、結婚記念日にデートをすることを決めたという例です。その際、赤丸の1~3までを結婚記念日デートの約束事としました。この取り決めはうまくいったので、その夫婦は、クリスマスについても同じルールを設けたいと思ったのです。ただし、プレゼントについては夫婦間で交換するのではなく、夫婦の間の子どもに送りたいと考えました。その際、結婚記念日と同じように「クリスマスはデートをする」とした上で、赤丸の1を若干修正し、そのほかは同じルールを定めました。これでクリスマスについても結婚記念日と同じルールを設けることができたのです。

しかし、「結婚記念日」と「クリスマス」の部分とプレゼントの送り先が違うだけで、あとは同じルールなのに、同じ文章が何度も登場するのは無駄な気がしないでもないですよね。そこで、以下のように「準用」を使うとスッキリします。

  1. 結婚記念日はデートをする
    1. 互いに1万円以上のプレゼントを用意する
    2. デート中は仕事の連絡を一切しない
    3. デートスポットは事前に2人で協議して決定する
  2. 結婚記念日のルールはクリスマスについて準用する。この場合、第1項は「子どもへのプレゼントを用意する」と読み替えるものとする。

上の2つの例を比較すると、かなりスッキリしたことがわかるかと思います。このように、「準用」は繰り返しを避けるために使われます。準用先は本来の対象ではないので、本来の法律のルールがそのままでは当てはまらない場合があります。その場合は、上のクリスマスの例の「読み替え」のように少し手直しをした上で、本来の対象と似た対象にもあてはめようとするのです。

(2)準用の使用例

では、実際の使用例をみてみましょう。

民法第559条 この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

 有償契約 当事者双方が互いに対価的意味をもつ給付をする契約をいいます。たとえば、賃料の支払いと物件の引渡しや請負代金の支払いと仕事の完成など、互いに同等と考えるものを給付する義務を負うような契約を意味します。

この条文は、この節のルールを賃貸借契約や請負契約などの有償契約に「準用」することとされています。そして、「この節」というのは「第三節 売買」を意味しますので、売買についてのルールは、基本的には賃貸借契約や請負契約にもあてはまることとなります。たとえば、以下のようなルールが賃貸借契約や請負契約にあてはまります。

民法第558条 売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。

賃貸借契約や請負契約を実行するにあたって費用が発生した際には、当事者双方がワリカンすることになるのです。もっとも、契約によって異なるルールを設けることも可能です。

このように、法律をみるとさまざまな場面で「準用」という用語がでてきますので、よかったら一度探してみてくださいね。

(3)例による

「準用」と似た意味の用語として「例による」というものがあります。これは、ある事項に関するルールたちをまとめて借りてきて、他の事項についても同様の扱いをする場合に用いられます。たとえば、以下の条文をみてください。

行政事件訴訟法7条 行政事件訴訟に関し、この法律に定めがない事項については、民事訴訟の例による。

なんと、民事訴訟法や民事訴訟法規則などのルールをまるごと借りてきています。このように、単なる「準用」よりも広い範囲でルールを借りる場合に「例による」が使われることが多いです。ただし、「準用」とまったく同じ使われ方がされることもあります。以下の条文をみてください。

刑法第234条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。

この条文は、ただ単に刑法233条の「3年以下の懲役叉は50万円以下の罰金」を借りているだけです。

以上みたように、「準用」と似た用語として「例による」という用語があることを知っておいてくださいね。

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「準用」についてはいろんなところで出てきますし、契約書を作成する際にも知っておくと便利なので、この機会にしっかり学んでおいてくださいね。