1 はじめに
僕は偏差値40ほどの大学を卒業し、京大のロースクールを修了し、新司法試験を一発で合格しました。そんな僕が合格できたのは、司法試験の勉強をはじめた早い段階で、戦略的な勉強計画をたてて、それを淡々と実行したからです。そんな僕の戦略的な勉強計画を紹介します。
2 7つの受験戦略
僕がたてた戦略的な勉強計画とは、次の7つです。
- ゴールを明確に設定する
- 期限をしっかりと把握する
- 目標を細分化する
- 時間を買う
- 答案を見てもらう機会の確保
- 答案に書くことを絞る
- 運動をする時間を確保
以下では、これらの戦略の詳細を説明します。
3 勉強計画に関する戦略
① ゴールを明確に設定する
計画を立てる上では、まずゴールを設定しなければなりません。たとえば、マラソンを走る場合、何キロ先にゴールがあるのかを把握してからどれくらいのペースで走るのかを決めるはずです。当然ながら、ゴールが10キロ先にある場合と、42.195キロ先にある場合とではペース配分が大きく異なります。他にも、企業は売上目標をたてて、それに向けて創意工夫をすることで目標を達成しようとするはずです。
ゴールを設定する必要があるのは勉強でも同じです。ただし、予備試験や司法試験の「合格」というゴールは抽象的にすぎます。そのため、ゴールをもう少し具体化する必要があるのです。
そもそも、予備試験や司法試験に合格するというのは何を意味するのでしょうか。さまざまな回答があるとは思いますが、僕はこのように定義しました。「試験に合格するということは、試験当日に合格できるだけの実力を備えていること」と。とはいっても、次に「合格できるだけの実力とは?」という疑問が生じます。そこで、僕は合格体験記を読み漁りました。合格体験記を読み漁ると、一つの共通点を見つけました。それは基礎の重要性です。ほとんどの合格者が合格体験記に基礎の重要性について記していたのです。
ここでいう「基礎」というのもさまざまな捉え方がありますが、僕はこれを「どの本にも書いてあるような重要事項を理解し答案に表現できる能力」と捉えることにしました。このような能力を試験本番までに備えること、そして試験本番にその能力をいかんなく発揮することをゴールと設定したのです。
② 期限をしっかりと把握する
ゴールの位置を把握したので、次はペース配分を決めなければなりません。ご存知の通り、予備試験や司法試験は年に1回しか試験を実施しませんが、何年度の試験に合格するのかを決めなければなりません。これを決めることで自分の可処分時間がわかります。僕が受験生の頃にはじめて自分の可処分時間を割り出したときには、可処分時間がかなり限られていることに驚きを隠しきれませんでした。
このように、可処分時間を割り出すことで無駄な勉強をしている場合ではないことがわかります。たとえば、司法試験の過去問はプレやサンプルを含めると既に各科目につき15年分程度あります。これを合計すると、105となります(15年×7科目=105)。1日1つ過去問を解いても100日以上かかる計算になるのです。
以上の通り、受験勉強は時間との戦いです。常に自分に残された時間を把握することで、効率的に受験勉強を進めていく必要があるのです。
③ 目標を細分化する
予備試験も司法試験も最難関試験に位置づけられます。このことが意味するのは、いきなり予備試験や司法試験の合格レベルに到達するのは難しいということです。ジャンプで合格レベルを目指すのではなく、まるで階段を駆け上がるかのようにステップを踏みながら実力を培う必要があります。そうすることで、合格までのすべての過程を達成目標化することができ、モチベーションの維持に繋がります。
たとえば、ダイエットでも「5か月で10kg痩せる!」という目標を立てたとしても、「1か月に2kgずつ」、というように細分化した目標を立てるはずです。司法試験でも、より達成しやすい小さな目標を1つずつ達成することで、合格に近づいていく実感を持てるようにした。
僕の場合は、次のように細分化した目標を立てました。
- 法学検定合格
- 行政書士試験合格
- ロースクール入試合格
- 司法試験合格
つまり、最初の目標に法学検定を、その次に行政書士試験、その次にロースクール受験、その次に司法試験というように、階段状の小さな目標を立てたのです。この目標を辿ることでで無理なく学習を進めることができました。
④ 時間を買う
ゴールを設定し、残された期間を把握し、目標を立てた僕は、勉強のツールを探しました。そうです、教材です。大きく分けると基本書等を用いて独学をするか、予備校の講座を購入するかの2つのルートがあることがわかりました。そこで、巷で良書と言われている憲法の芦部先生の基本書や民法の我妻先生の基本書などを試しに読んでみました。感想は次の一言に尽きました。
意味不明。
「教えてもらうほうがはるかに効率的だ」と感じました。おそらく、この感覚には多くの方が共感してくれるのではないかと思います。そして、僕の場合は、教えてもらうことで早期に法律の実力をつけることができ、大学内で成績優秀者として授業料免除を受けることができました。つまり、浮いた学費分で受講料を払える状態になったのです。僕は、某塾に100万円近くの大金を支払うことになりましたが、その分の価値はあったと実感しています。講座を購入するという行動を通じて、本来なら独学に要していたであろう時間をお金で買ったのです。
ちなみに、基礎講座はどこのものをとってもいいと思います。ただし、基礎講座を購入するにあたって「春からスタート2年コース」などはやめておいたほうが賢明です。法律の学習では全体像を把握するのが重要なので、既にたくさん配信されているものを購入して一気に視聴して学習を進めたほうが効率的です。
一時的に出費という痛みを伴いますが、法曹になってから取り返せばいいだけの話です。講座の購入を通じて積極的に時間を買うことで、学習初期のつまづきを回避することが重要です。
4 勉強内容や受験政策に関する戦略
⑤ 答案を見てもらう機会の確保
京大ローに入ってから、仲の良かった人とゼミを組みました。ゼミの中で自分の答案を見てもらうことで、自分の出来ているところとできていないところが浮き彫りになりました。自分の答案の問題点は自分では気づけないことがあります。他人に自分の答案を見てもらい、自分の答案の悪いところを修正することで弱点を克服する作業が必要です。
答案を見てもらうためには、答案を書かなければなりません。過去問を教材とし、時間を計りながら過去問の答案を作成するのですが、自分の実力のなさを痛感しました。時間が足りないし難しいしで他人に見せるのが恥ずかしい答案になってしまっていましたが、それでも答案を見てもらいました。本試験で採点をするのは試験委員という他人なので、他人が読んで意味内容のわかる答案にしなければなりません。その意味で、他人に答案を見てもらう機会を確保することは重要なのです。
他人に答案を見てもらうために予備校の答練や模試を利用することもできます。しかし、僕の場合、予備校の模試は受けませんでした。模試より過去問の演習を優先したかったからです。ゼミを組める環境にない場合には答練や模試を利用することが賢明といえるでしょう。
⑥ 答案に書くことを絞る
これは自信をもってオススメできる戦略ではありません。僕は、答案を書くのが遅いし、覚えるのは苦手だからこの戦略をとりました。満点を目指す試験ではない以上、時には何かを捨てることも必要になります。僕の場合、答案のボリュームを捨てて、思考過程が読みとりやすい文章を書くようにしました。試験中に問題点に気づいてもそれを書くか書かないかの選択をするようにしました。そうすることで、なるべく途中答案にならずに答案を最後まで書ききることができるようにしたのです。
せっかく覚えたことは全て書きたくなりますが、戦略的に書くことを絞ることで途中答案を防止するというのが僕の受験政策でした。
5 勉強以外の時間に関する戦略
⑦ 運動をする時間を確保
受験生活はとにかくストレスがたまります。また、試験は長丁場だから体力勝負的なところがあります。僕は、大学時代からバドミントンをやっていましたが、これは受験生活でも続けていました。運動をして、体力や健康を維持しながら勉強を継続することが大事だと思います。
僕は脳科学者ではないから詳しいことはわかりませんが、運動と脳の働きは連動しているような気がします。運動してリフレッシュした後は勉強内容も頭に残りやすい気がするのです。少なくとも、ストレスを発散できるような趣味を持っておくと勉強を継続しやすいといえるでしょう。