はじめに
予備試験や司法試験の勉強をしているとどうしてもわからないところがが出てきてしまいます。そんな参照したいのは詳細に書かれた信頼のおける基本書です。信頼のおける基本書を読めば、おおよその疑問は解決できますし、たとえ疑問を解決できなかったとしても何かしらのヒントを得られることが多いです。また、信頼のおける基本書に書かれていないような疑問については、とりあえずわからないまま進めてよいという目安として使用することもできます。
そのため、詳細に書かれた信頼のおける基本書については座右に置いておきたいところです。ところが、たくさんの基本書の中から信頼のおける基本書を選ぶのは難しいことですし、それに時間をかけるのももったいないです。そこで、私が最も信頼している基本書とその他の信頼できる基本書を紹介しますので、この中から選んでいただければと思います。
1 最も信頼している基本書
私が最も信頼している民法の基本書は以下の通りです。総則・物権など分野ごとに紹介します。民法改正に未対応のものもありますのでご注意ください。
(1)総則
- 民法講義1 総則 第3版(有斐閣) 山本敬三
この本は、民法総則を最も綺麗に整理した本です。詳細かつ明晰な記述が特徴です。総則分野についてのおおよその疑問点はこの本で解決します。もっとも、債権法改正に対応しておらず、改正後はやや使いづらくなっています。私は、改正対応していない点を踏まえてもなお現時点で最も信頼できる基本書であると確信しています。
(2)物権・担保物権
- 講義 物権・担保物権 第4版(有斐閣) 安永正昭
この本は、物権と担保物権についてわかりやすく解説しています。物権と担保物権とをあわせて600頁以内で記載しているため、情報量としてはそれほど多くはありません。しかしながら、背景事情を踏まえた記載が充実していることや、学習上の疑問はおおよそ解決できるため、私としてはこの本を最も信頼できる基本者として挙げています。
(3)債権総論
- 債権総論 第4版(岩波書店) 中田裕康
この本は、債権総論を非常に丁寧に解説しています。論点の記載においては、各見解が登場した経緯について詳細に記載されているため、各見解の対立点をよりよく理解することができます。記述の安定性や網羅性の点において、債権総論分野で最も信頼できる基本書です。
(4)契約
- 民法講義4-1 契約 第3版(有斐閣) 山本敬三
この本は、民法総則と同様に契約分野について最も綺麗に整理した本です。詳細かつ明晰な記述が特徴です。契約分野についてのおおよその疑問点はこの本で解決します。もっとも、整理が行き渡りすぎて逆に検索性が劣っている箇所が見られます。また、債権法改正に対応しておらず、改正後はやや使いづらくなっています。私は、改正対応していない点を踏まえてもなお現時点で最も信頼できる基本書であると確信しています。
(5)事務管理・不当利得
- 事務管理 不当利得(三省堂) 加藤雅信
不当利得分野で一冊挙げろと言われれば最初に挙がるのがこの本です。1998年に出版されたかなり古い本ではありますが、未だに色あせない良書だと思います。もっとも、事務管理や不当利得の分野について疑問を持つこと自体が少ないので、使用機会はあまり多くありません。
(6)不法行為
- 不法行為法 第2版 窪田充見
この本は、不法行為について驚くほどわかりやすく書かれた本です。言葉を尽くして説明を行っているため、この本を読むことで不法行為分野についてより理解が深まります。不法行為分野は切り詰めて考えると疑問点が多いのですが、疑問点を調べる際には是非参照したい一冊です。
(7)家族法
- 家族法 第4版 窪田充見
この本は、家族法分野についてかなりわかりやすく解説しています。家族法分野は分量が多く、しかも意外と難解な事柄も含まれているのですが、具体的なケースを用いてしっかりと説明しています。制度趣旨についての記載が厚く、家族法を根元から理解することのできる本です。
2 その他信頼できる本
私が信頼できると考えている本は以下の通りです。こちらは法改正に対応済みのもののみ紹介します。
(1)疑問点をサッと調べるなら
- 新基本法コンメンタール 物権(日本評論社) 鎌田ほか
- 新基本法コンメンタール 債権1(日本評論社) 鎌田ほか
- 新基本法コンメンタール 債権2(日本評論社) 鎌田ほか
- 新基本法コンメンタール 親族 第2版(日本評論社) 松川ほか
細かい条文について疑問を持ったときによく使います。条文ごとにまとめられているので求めている情報にアクセスしやすく非常に便利です。
(2)初学者でも読めるがかなり詳しい
- 民法の基礎1 第5版(有斐閣) 佐久間毅
- 民法の基礎2 第2版(有斐閣) 佐久間毅
改正対応している総則の本の中では最もおすすめの本です。物権もかなりいいと思います。初学者への配慮が行き届いており、とてもわかりやすい解説のため、民法の総則や物権をはじめて勉強する方にもおすすめできます。
(3)担保物権といえば
- 担保物権法 第4版(有斐閣) 道垣内弘人
担保物権分野ではかなり信頼の置ける本です。
(4)債権法改正前の議論の整理が秀逸
- 新版 債権総論 上巻(判例タイムズ社) 奥田昌道、佐々木茂美
- 新版 債権総論 中巻(判例タイムズ社) 奥田昌道、佐々木茂美
改正未対応の旧判のほうが個人的には好きですが、新版も安定した記述でおすすめです。なお、下巻についてはまだ販売されていません。
(5)安定感抜群の本
- LEGAL QUEST民法6 親族・相続 第5版(有斐閣) 前田陽一、本山敦、浦野由紀子
必要十分な記述で使いやすいです。窪田先生の家族法が合わない場合にはこの本一択でしょう。
(6)普段の学習用に
- 民法(全) 第2版(有斐閣) 潮見佳男
この本は民法の基本書の中では圧倒的にコンパクトです。その割に網羅性が高いこともおすすめポイントの1つです。非常によくまとまっているという印象を受けます。実は、何気に具体例も豊富です。
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